俳優の渡辺徹さんとタレントの榊原郁恵さん夫妻は、一昨年末に2軒目の新居を完成させた。
この家には渡辺さんの「男の夢」が詰まっている。
一方、榊原さんにとっては、「理想と現実のギャップ」を
感じているという。
理想を形にする難しさと向き合いながら楽しく暮らす二人の「家」について、大いに語ってもらった。
「今回の家を建てるのに当たっては主人に、“俺の家だ!”という思いが強くあったんです。というのも前の家を建てる際、彼は仕事が忙しくて最終的な判断はすべて私がすることになったため、彼としては“自分の家なのに自分の希望が取り入れられていない”と、ちょっと不満だったらしいんですね。そこで2軒目の家は主人の夢を取り入れつつ、他の家族の希望と合わせていくのが大きなポイントになりました」と語るのは、一昨年末に新居が完成した榊原郁恵さん。
新居は駅にも近く、春になると周囲に桜が咲く素敵な環境にある。売り地になっているのを榊原さんが見つけて、休日に家族とともに散歩がてら見に行ったところ家族全員が気に入り、渡辺さんが即決で土地を購入した。
この2軒目の家に渡辺さんの長年の「男の夢」が“実現”したのである。
なによりも渡辺さんが大きな力を注いだのがシアタールームだ。大きなスクリーンに、こだわって選んだスピーカーや音響機材が備え付けられ、本格的な試写室のレベル。
「彼はこれはシアタールームではなくシアターだと主張してまして(笑)。お客さまがみえると、必ずこの部屋にご案内するんですが、“映画が始まります”と言ってスイッチを押すと、スクリーンがゴーッと降りてきて、室内が映画を見るのにちょうどよい暗さになり。いつもお見せするのはアニメの『ファインディング・ニモ』。5分間なんですけど、海のボコボコボコッという音が下の方から聞こえてきてお客さまから感嘆の声が上がると満足するみたいですね」
まるで子供のように天真爛漫にシアター(ルーム)の紹介をしている渡辺さんの表情が目に浮かぶよう。なんとも微笑ましい光景だ。
さらにお客さまをおどろかせるのが玄関。美術館のように広い玄関スペースはタイルが敷き詰められ、とてもお洒落な雰囲気を醸し出している。そのうえ電気式の暖炉も設置されていて、スイッチを入れると本当の火のような炎が揺らめき、温風が出てくるとか。
とはいえ新居はもちろん渡辺さんだけではなく、他の家族の要望・希望もしっかり盛り込まれた。同居する榊原さんの母のために和室が用意され、二人の息子たちの部屋も彼らの要望を入れたデザイン、色調になった。
その中で、榊原さん自身が一番こだわったのが「自分の部屋」である。
「前の家には私の部屋がなかったので、自分の部屋を持つことが、私の夢だったんです。ですからインテリアにも凝りました。グリーンを基調とした色調に、チョコレート色のちょっとシックな家具をおいたアジアンテイストの部屋にして。我ながら満足のいく大好きなスペースができたんですよ」
この部屋でドラマのセリフの練習をしたり、歌の練習をしたり、オフの日にはお気に入りの椅子にゆったりと腰掛けて本を読んだりしたいと郁恵さんの夢は広がっていたのだが、実際に住み始めてみると、この部屋にはほとんど足を踏み入れていないという。いったいなぜか?
「便利だと思って寝室の隣に私の部屋を造ってしまったんです。ところが夜、セリフの練習をしようとすると隣で寝てるわけですね。小さい声だと練習にならないので、結局前の家と同じようにキッチンで練習をすることになってしまいました。オフの日に自分の部屋でのんびりしようとしても、しばらくすると不安になる。家の一番奥にあるので、家族から断絶した感じがするんですよ。家族との交流がまったくなくなってしまった瞬間に主婦って、すごく不安になるんです。あんなに一人の時間がほしかったはずなのに、結局家族のいるリビングやキッチンのほうが落ち着いて。もっとキッチンやリビングから近いところに部屋を造ればよかったと思ってます」
渡辺&榊原夫妻にとって2軒目となる今回の家。前の家の経験もあり、建てるに当たっては余裕もあったのではないかと思われるが、それを郁恵さんはあっさり否定する。
「それがそうはいかないんですよ。1軒目のとき、理想を形にする難しさに直面したので今回はその経験を生かせるだろうと思ったのですが、同じでした。仲人をしていただいた愛川欽也さんとうつみ宮土里さんから、1軒目のときは“家は広く使うとランニングコストがかかるから気をつけたほうがいいよ”といろいろアドバイスされて、それで割と堅実に作ったんですが、2軒目ではすっかりそのアドバイスを忘れてましたし」
「3軒建てたら納得のいく家ができる」とよく世間では言われるが、3軒程度では無理というのが2回家を建てた榊原さんの実感だ。
「理想の家ってそのときそのときで変わってしまうし、家族一人ひとりの理想も違う。ですから家は何回建てても、毎回こうすればよかったという部分が出てくるんじゃないでしょうか。それが家なのだと思います、きっと」
ちなみに今回の家で、郁恵さんが「造っておけばよかった」と一番思うのは子供たちのための「体育館」だ。
「今って、小学生以上の子供たちが、外でボール遊びとかをのびのびできる場所って少ないんですよ。だから家で集まって、面と向かわずに横座りになってゲームをしながら話をしている。それが私はすごくイヤなんです。できたら子供には元気よく遊んでもらいたい。外にそういう場所がないのだったら、家に造ってしまえばいいんじゃないか、と思ったんですけど、なんだか突飛なことを言っている気もして設計士さんにあまり強く主張しなかったんです」と残念がる。
もっとも体育館はなくても息子さんたちはリビングをしっかり遊び場に変えている。夕食が終わるとドマーニのダイニング用の大きなテーブルは卓球台に変身。テーブルの中央にネット替わりにDVDのカバーが並べられ、卓球の試合が始まるのだ。また時にはクッションなどを並べた「ゴール」が作られ、リビングがサッカー場に早変わりし、時にはお洒落なスタンドをボールが直撃するといった「惨事」が起こることも。
「やっぱり楽しく遊べる体育館を造ってあげたい。じつはまだ諦めていないんですよ。リフォームの時になんとかならないかなと、家の中を虎視眈々と見ています」といたずらっぽく笑う郁恵さんだった。
1976年、「第1回ホリプロ・タレントスカウトキャラバン」でグランプリに輝き、翌年に、「私の先生」でデビュー。「夏のお嬢さん」「いとしのロビン・フッドさま」などが大ヒット。華奢なアイドルが多い中、ピチピチとした健康的なルックスが人気を呼ぶ。81年に初演された、ミュージカル『ピーターパン』の主役は、彼女の当たり役に。以降歌手、女優、タレントとして活躍を続けている。87年に俳優の渡辺徹と結婚し、現在、二人の男の子の母に。05年に18年ぶりに舞台でのフライングに挑戦。変わらぬ若さをアピールした。 |



